中国に漢方薬はなかった!?中国医学の歴史

・中医学では漢方薬は存在しなかった

病院の診療や手術などの医学が「西洋医学」であるのに対し、漢方薬を服用したり、足つぼ療法などを受けることは、東洋医学という認識だと思います。
東洋医学は中国の医学といったイメージを持つ人も多いと思いますが、「中医学」という言葉もあるように、中国の医学と東洋医学は、また別のものなのでしょうか。

そもそも、漢方薬は中国からやってきたと私たちは思っていますが、中医学では「漢方薬」というものは存在しなかったのだそうです。
中医学で使用されていた薬は、ひとつひとつを「生薬」と呼び、今でも使われている言葉ですね。
現在の漢方薬は、これらの生薬を配合して作られますが、当時の中医学は生薬を配合して作った薬は「方剤」と呼んでいました。
そして、西洋医学が出てきたときに「蘭方」と名前をつけたことを受けて、中医学が漢の国からやってきたことにちなみ、「漢方」と呼ぶようになったそうです。

ちなみに、現在も漢方薬は日本のほうが品質が高く、中国からやってきた旅行者は、日本の漢方薬を買いだめして帰国するのだとか。
また、現在中医学をもとに作られた薬のことは、「中薬」と呼んでいます。

中医学自体は古くから存在していましたが、一番最初は呪術師として人の病気や不調を治していたそうです。
その後彼らは2つに分裂していき、ひとつは宗教を作り上げ、もうひとつは医師や鍼灸師として進化していきます。
医学の始まりが呪術というのは、かなり意外ですよね。

・東洋医学と中医学の違い

東洋医学は漢方や生薬などを活用するさまざまな医学の考え方を呼ぶのに対し、中医学は前述したように、中国から発展した医学だと考えることができます。
東洋医学にはインドのアーユルベーダといった医学の考え方も含まれるため、かなり幅広いです。

アーユルベーダのほかにも、インド医学やチベット医学など、東洋医学には実にいろいろなものがありますが、東洋医学の「体全体を把握して治療や診断を行なう」という点は共通しています。

東洋医学の中には「漢方医学」という医学もあり、これは中医学を日本で進化させていった医学の考え方です。
いずれも東洋医学のひとつとして考えてよいと思いますが、細かく分別していくとかなり複雑だということがわかりますね。

最近では「薬膳」なども流行っていて、漢方の素材を使った料理で不調を改善したり、体調を整えることができるとされているものです。
この薬膳についても、漢方医学を取り入れているものもあれば、中医学を取り入れている薬膳もあるなど、実にいろいろな考え方がありますので、東洋医学や薬膳の勉強をする際は、そのルーツについてきちんと学んだ上で、自分がどの医学の勉強をしたいかという点を絞り込んでいく必要があります。